島に今ある車を活用して
公共交通機関の不足を補う

2019.06.03

CREWは、長崎県 五島市の久賀島(ひさかじま)にて、2019年4月24日からの1ヶ月間、観光繁忙期に不足する移動手段を、住民が自家用車で補う実証実験を行いました。今回は、五島市 地域振興部 部長の塩川 徳也さんに、久賀島の交通状況や、CREWの実証実験実施に至った背景などについて伺いました。

久賀島の交通状況について教えてください。

久賀島は、五島列島で3番目の大きさを誇るほどの広大な面積の割に、人口が約300人と少なく、移動には車が不可欠です。しかし、島内でレンタカーとタクシーを提供する会社は1社しかありません。

2018年に久賀島の集落が『長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産』の構成資産の1つとして世界文化遺産に登録された影響で、観光客はこれまで以上に増加し、公共交通機関の不足は深刻な問題となっています。

島を訪れる観光客を迎える体制づくりは、早急に解決したい課題の1つでした。

長崎・天草「潜伏キリシタン」 世界遺産登録決定(日本経済新聞 2018年6月30日)

10連休の長崎・天草、世界遺産効果で旅行者倍増(産経新聞 2019年5月10日)

- 公共交通機関の不足が課題となる中、
CREWと取り組むことを決めた理由を教えてください。

はじめは、島民がもともと持っている自家用車を有効活用できるサービスがあると聞き、興味を持ちました。

何度かテレビ会議にて協議を重ね、車の保険やドライバーの審査などの安心安全に関する体制づくりや、スマホ1つで呼び出しから決済まで完結する便利なシステムに魅力を感じました。

また、久賀島のような観光地は、季節によって観光客の人数が大きく変化します。現在は世界文化遺産登録直後という話題性もあり、正直今年のゴールデンウイーク同等の観光客数が、来年も島を訪れるかどうかはわかりません。
そんな中、現在の需要だけを見てレンタカーやタクシーの台数を増やしてしまうことは大きなリスクです。導入にはコストがかかりますし、その分の人材も新たに確保する必要があります。需要が減ってしまえばたちまち赤字となってしまうでしょう。

そこをCREWであれば、島民の方が保有している自家用車を島民自らが空いた時間を活用して運転することで、観光客の移動手段不足を解決することができます。初期費用はもちろん、観光のピークシーズン以外でも負担が発生することはありません。

久賀島のように需要の変化の見通しが難しい観光地にとっては、自由に供給のバランスを調整することができる点は大きなメリットでした。

しかしいちばんの決め手は、Azitさんの地元に寄り添う姿勢でした。ベンチャー企業というととにかく勢いがあってスピーディーにものごとを進めていくというイメージを抱いていたのですが、Azitさんはとにかく進め方が丁寧だったのです。島民をはじめとした様々なステークホルダーの立場を想像し、観光客にとって最もよい方法を模索する姿勢を見て、一緒に取り組むことを決めました。

実証実験に関して、観光客などからの反応はいかがでしたか。

埼玉県から観光でいらっしゃったご夫婦を乗せたというCREWパートナー(ドライバー)がいました。タクシーが満車だったため久賀島行きを諦めていたけれど、CREWの存在を知ってお越しくださったということで、ドライブ中にはお互いの家族の話や久賀島の歴史の話などで盛り上がったとのことです。ドライブ終了後はご夫婦の希望で3人で記念写真も撮影したとのことで、ご満足いただけたようでよかったなと思いました。

- CREWに期待することは何でしょうか。

これまで久賀島を訪れる観光客は、船で直接教会の近くまで行き、見学をしたらそのまま船で帰るという方が半数以上でした。車がないと島の周遊ができないためです。しかしCREWを利用することで、教会などの観光スポットから、島内の別の観光スポットへと移動することができるようになります。観光客が島を周遊することで、島の中でご飯を食べたりお土産を買ったりと、島全体の経済活動も活発になることを期待しています。

そして、CREWパートナーとして観光客を車に乗せて運転することが、島民の生きがいにもつながればいいですね。都会から来た若い方と、昔から久賀島に住む方が交流することで、新たなコミュニケーションが生まれ、お互いに刺激的で楽しい時間を過ごせればと思います。

- 最後に、塩川さんが思う久賀島の魅力を教えてください。

1つめは、やはり潜伏キリシタンの歴史です。一見きれいに見えるような教会でも、歴史を知らずに見るのと知ってから見るのとでは、全く見え方が異なります。久賀島を訪れる際には、潜伏キリシタンの歴史について少しでも学んでからお越しいただいた方が、より島の魅力を感じ取っていただけると思います。

2つめは、人工の音がしないことです。久賀島は本当に静かな島で、鳥の鳴き声や波の音など、自然の音しか聞こえてきません。時間の感覚も忘れてしまいそうになります。ぜひ都会の喧騒を離れて、久賀島にリフレッシュをしに来ていただきたいです。

以上、五島市 地域振興部 部長の塩川 徳也さんに伺いました。塩川さん、ありがとうございました。
CREWはこれからも、様々な地域で公共交通機関の不足を補うために活動を続けてまいります。